忍者ブログ
メイン
5 4 3 2 1
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

流藤

夢を追いかける少年、しばしの別れ。
ちょっとだけ夢に嫉妬する藤井ちゃん。

流川には是非にとも海の向こうで成功して欲しいです。






熱い抱擁を交わらせるわけでもなく、暖かい言葉をかけ合うでもなく、
ただ冷たい夜の風が二人の間に流れていた。

男は出てく人、女は待つ人。
たかが、一ヶ月、されど、一ヶ月。
高校生の一ヶ月を、成人の一ヶ月と同じ秤に乗せてはいけない。
そこに恋愛が絡んでくると、特に―――


「長い、ね」
「おう」

冬の夜はしんとして、耳を澄ませば、ぱりぱりという音が聞こえてきそうだ。
短い言葉にも空気は反応して、そこだけを白く染める。

「浮気、すんじゃねーぞ」

男は女から目をそらして言った。
その視線の先には、きっと目指すもの。

「…うわき、すんじゃ、ねーぞ」

女は男をじっと見つめて言った。
視線の先は、誰にも渡したくない大切なもの。
ずっと傍に置いておきたいもの。ずっと添い遂げたいもの。

でも、女はほんとは知っている。
男が、もうとっくに自分に浮気していること。
だって、彼の本命は視線の先。

「アメリカ、ってどっちだ?」
「え?!…えーと、こっちが北で、東だから…あっち、かな?」

彼が本命を心で抱きしめる、その隙間に自分がいる。
両腕できつく抱きしめる抱擁じゃなくても、
腕1本、指1本。
自分に受け渡してくれるのなら。

「そか、じゃー。おれはあっちにいるから。何かあったら言えよ」

本気なのか冗談なのか、いつもの顔色で彼は言い、本命をしっかりと指差す。
浮気相手の愛人なら愛人らしく、少し悪戯に振舞ってやろうと思い
女は返事の代わりに、男の横顔に少しのキスをした。




熱い抱擁はそこにはなく、暖かい言葉も無く、
冷たく小さい唇だけが、震えた二人を繋ぐのだった。

PR
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL
URL
COMMENT
PASS
TRACKBACK
TRACKBACK URL
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
みつば
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
まじめに考えます。
バーコード
ブログ内検索
アーカイブ
カウンター
アクセス解析
アクセス解析
忍者ブログ [PR]
"みつば" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP @ SAMURAI FACTORY INC.